師母を紹介してくれませんか?

大阪で私の道場に入門した道場生の一人が、生意気にも、入門してすぐに「師母に会いに行きたいのですが、紹介してくれませんか?」と言って来た、普通の大阪のおばちゃんがいた。空手の先生も氣で投げ飛ばすことができるのだ、と言う。だから何だ!とムカついたのではあったが、たとえ紹介してやったとしても師母は会わない!と言っただろう。それだけ初対面者を警戒していた。他団体の情け無い訓練もそこそこに飛ばすことが自慢の生意気な者の多い流派の生徒たちが私の道場に押し寄せて、道場にはそんな者でごった返して秩序の無い道場運営をその当時強いられていた。他の道場で多くの人を氣で投げ飛ばすことができるから、私をも投げ飛ばすことができる、と勘違いした生徒が何人も私に挑戦した。負ける訳にいかないから、挑戦されると手を合わせた直後に私の手を一閃するとある者は空中に吹っ飛んで、ある者は壁に突き当たり、向かいの壁に向かって全速で走ってまた壁にぶちあたる。こんなにも弱いのに口ほどにもない者たちであった。このおばちゃんも同じ口でゴロンゴロン転がっていた。あまり強く氣で彼らを打つと、窓を破って外に飛び出す者が出る可能性があったので、氣をかなりコントロールして対処しなければいけなかった。基礎の基礎である脚の訓練も出来ていない。ただ飛ばすことが売りの団体の生徒たちはこんなにも弱い。極端に氣に敏感にして飛ばすシステムで、本格的には強くすることは出来ない、しない流派なのだ。これを読んだ者は私がどの団体を言っているのか、すぐにわかるだろう。師母に会いに行って、訓練したとしても、たった一日でギブアップしていただろう。一体それほどにもきつく辛い修行をこんな武術の訓練もしたことがないおばちゃんが師母に会ってどうしようというのだろう?ちゃんちゃらオカシイと言うのはこのことである。当時四十を過ぎた中年太りしたおばちゃんは氣のことが、その氣功の最高峰にある尤氏長寿養生功のことを理解していなかった。私が手加減していなかったら、ケガ人は、とんでもない数になっていただろう。一度、昔大学では少林寺拳法をしていたから受け身は得意だと言ったので、軽く二本の人差し指で肩を押したら、両足揃えて空中に浮いて後頭部から床に着地した者がいた。殺してしまった!と救急車が来て警察にも呼ばれて事情聴取されて道場も閉めてアメリカに戻ることになる!と頭の中ではシュミレーションをして覚悟を決めたのであった。幸いにもチョットの間口がきけなくなっただけで頭の骨も折れていなかったので、何事もなかったのである。その時以来、前にも増して、初心者に対する氣の出力には充分に注意をして今に至る。長寿養生を教える尤氏長寿養生功が人を殺してしまったら、シャレにもならない。その時に、何故にドクター尤が初対面者との氣の交流をしていなかったのか理由が分かったのである。あまりに強い氣に対して初心者は為す術が何もない、ことを知っていたのである。当時の私は手加減していたにもかかわらず、骨折者五人、脳震盪三人、アキレス腱断裂一人、の惨憺たる結果となってケガ人が続出した。今でこそ、一人のケガ人も出さずに完璧に注意して氣の交流をしているのである。