震脚の衝撃

本格的登山で遭難する確率は登っている時より降りる時の方が多い、と言うことを知っているだろうか?理由がある。脚への負担、衝撃は階段を降りる時の方が強くて筋肉の細胞が壊れる理屈と同じく、山から降りる時の脚への衝撃が大きいのに加えて登頂に成功した安堵感で氣が緩んでいるせいもあるかも知れない。尤氏長寿養生功の震脚は上に跳び上がるのではない。両足で跳んだ後に床をまるで、大砲の弾を撃つように床に向かって両足で踏みつけるのである。その時の衝撃は道場全体が震えるほどである。私がアメリカに戻り訓練を再開した時に私の妻が遅れて道場に入って来た時に道路を歩いているとワンブロック離れていても私の震脚の音が聞こえていた、と言うのである。私の身体のサイズはアメリカ人に比べると三分の一ほどで、彼らのジャンプはそんなには音が出ない弱いものである。身体の小さな私が何故そんな強いジャンプが出来たのか?は私が毎日通い脚の筋肉の細胞を一旦壊して新しい筋肉細胞との交換に成功したからだろう。大砲の弾を撃つような私の震脚を師母はとても氣に入っていた。誰か中国からの古い弟子が来た時などは得意げに私に向かって、Mits,来ライ!と言って私を思う存分投げ飛ばして私の震脚の音を聴かせていた。私もそれに応えて、コンクリートの床に穴が開くほどに、足も砕けよ!と強い震脚をしたものである。中国では文革の時の拷問などの出来事の後には本格的な訓練は教えていなかったようで、自由なアメリカに来てから空勁を教え始めたと私は聞いている。それほどに共産党の政府を警戒していた。中国政府からも何度も中国に戻って教えるようにと言う通知が来ていたと言う。だから入門する時の厳しいチェックがあったのだ。同じ震脚の内容を私は信頼できる指導員に現在では伝えている。彼らの脚の筋肉は膝を締めるようにパンプアップすると、鉄のように硬く、競輪選手のように太ももがとても大きくなっている。完成するまでにはあと少しである。使う時には鉄のようになって、使わぬ時にはマシュマロのように柔らかい筋肉が形成される。筋肉は鍛える方法によって、出来上がる筋肉は違うものになる。氣のエネルギーは鉄のような硬さを持つと同時に真綿のような柔らかい筋肉を持つことでその差が大きいほど氣の量が決まるのである。瞬時に鉄となり、瞬時に真綿となる、筋肉を作らねば空勁はできるものではない。遭難した登山家が尤氏長寿養生功の基礎訓練を行なっていたならば遭難は起きていなかった、と私は考えている。